過熱する米大統領選挙。共和党ではマケイン上院議員が候補指名をほぼ手にしたと思いきや、思わぬ疑惑が噴き出した。 マケイン候補は、三月のロシア大統領選の後も実権を握るプーチン大統領を、日頃から激しく批判していた。だが、プーチン政権と近いロシアの富豪オレグ・デリパスカ氏と国外で接触していた――と米紙にスクープされたのだ。マケイン候補の足を引っ張るためのリークがあったようだ。 デリパスカ氏はソ連崩壊の混乱に乗じて利権を握りエリツィン前大統領にも食い込んだ狡猾な政商で、現在は世界最大手のアルミニウム企業UCルサルのオーナー。推定個人資産は百六十八億ドル(約一・八兆円)で同国長者番付二位。 この大物政商とマケイン候補が二〇〇六年に二回、スイスなどで接触していたという。特に二回目の接触は、米国務省がデリパスカ氏の米国での事業に問題があるとして査証発給を拒否した後だっただけに、キナ臭い。 マケイン候補はかねがね、プーチン政権と富豪の癒着を批判しており、「ロシアをG8(主要八カ国首脳会議)から追放しろ」が持論。報道に対し「会ったが、便宜は図らなかった」と主張しているが、失点は免れない。 マケイン氏との会談はデリパスカ氏から持ちかけたとされ、その狙いは、米国での商機拡大と、共和党中枢とのパイプづくりと見られる。クレムリンの悲願は米国への石油輸出だが、一度試験的にタンカーで輸出したきり頓挫している。

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