カナダに学ぶインテリジェンス改革

執筆者:北岡元2008年3月号

 安倍前政権が創設を目指していた国家安全保障会議(NSC)が昨年末に白紙に戻った。わが国のインテリジェンス(情報収集・分析)機能強化への歩みは、遅々として進まない。日本版NSC構想をめぐっては賛否両論があったが、筆者は、国家戦略立案のもととなる「情報収集」の強化、および、外交・警察・防衛に携わる省庁が縦割りを廃して「情報分析」の効率化を行なうことが喫緊の課題だと考える。 日本同様に対外諜報組織を有さず、米国に情報面で大きく依存しつつも、インテリジェンス改革を進めてきた国がある。カナダだ。「情報機関」と聞けばカナダ国民には忌まわしい記憶が甦る。同国では「治安維持」の名の下に、法執行機関たる警察が自ら法を犯していた。 一九七二年にカナダ警察の治安部隊が、同国東部ケベック州のとある納屋に放火した。急進的なケベック分離主義者と、米国の急進的黒人結社ブラック・パンサーとの会合を阻止するためだった。七三年には家屋に不法侵入し、ケベック党員のリストを窃盗。同州南部モントリオールにある左翼系の通信社に不法侵入した際にはデータファイルを破壊した。七〇年以来、治安部隊は令状なしに四百件以上の不法侵入を繰り返し、信書開披を行なった。

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