福田康夫首相が十二月二十七日から四日間の日程で中国を訪問したが、親中派の福田首相を中国側は細心の心遣いと異例のもてなしで歓迎した。 福田首相と温家宝首相の前例のない共同記者会見。全国中継された北京大学での福田首相の講演。野球のユニフォームを着た両首相のキャッチボール……。日中蜜月ムードのなかで私の目を引いたのは、胡錦濤国家主席(共産党総書記)が主催した二十八日夜の夕食会だった。 当初、温首相が主催する予定だった夕食会は、中国側の意向で胡国家主席が主催することになった。 過去、中国のトップが日本の首相歓迎の夕食会をもった例として、一九八六年、中曽根康弘首相に対する胡耀邦総書記のもてなしがある。しかし国家主席主催の夕食会は皆無。九九年に小渕恵三首相に対して江沢民国家主席が昼食会をもっているが、夕食会ではない。「格」にこだわる中国は、儀式性が高い夕食会は相手と同格の首脳が主催する。 なぜ原則を曲げてまで、胡主席は異例の夕食会をもったか。福田首相と胡主席は釣魚台迎賓館で会談した後、夕食会に移ったが、胡主席はこう挨拶した。「会談は中国国家主席と日本国首相としてのものでした。この夕食会は古い友人としてのものです」。これは意味深長だ。

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