昨年日本で行なわれたハンドボールの北京五輪アジア予選で、クウェートに有利な笛が吹かれたとして、国際ハンドボール連盟(IHF)がアジアハンドボール連盟(AHF)に予選のやり直しを命じたのは大きなニュースとなった。いわゆる「中東の笛」問題である。 一月下旬に東京で再予選が行なわれ、結局男女とも韓国が出場権を獲得したが、今後も東アジア諸国とAHFを牛耳ってきたクウェートの間に禍根が残るのは避けられない。 しかしなぜ、そもそもクウェートがAHF内で力を持ち、コート上での審判の不正を誘導するようなことになったのか。 鍵となる人物はAHFの会長を務めるクウェートの王族の一人、シェイク・アーマド(四六)である。彼は湾岸戦争で亡くなった父を世襲する形で、AHFだけでなくアジア五輪評議会の会長職に就いた。 それと同時に始まったのがハンドボールの強化だ。様々な競技が強化の対象として検討されたようだが、アジアで本格的に強化している国が少なく、しかもヨーロッパで盛んな競技ということでハンドボールに白羽の矢が立った。 もともとクウェートは、石油の輸出入の関係で西側諸国との結びつきが強い。実はアーマドはクウェート国内でスポーツを担当するばかりでなく、エネルギー相を務めた経験を持ち、さらに石油輸出国機構(OPEC)の議長などを歴任している。

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