激化する英露「神経戦」の見えない出口

執筆者:木村正人2008年3月号

リトビネンコ事件をめぐる外交官追放合戦に続き、ブリティッシュ・カウンシルを閉鎖に追い込んだロシア。両国関係はどこまで悪化するのか。[ロンドン発]元ロシア情報機関幹部の毒殺事件をきっかけに、英露関係が大きくきしんでいる。事件の容疑者引き渡しを求める英政府に対し、露政府は拒否。昨夏、外交官追放合戦に発展した。冷戦期もロシア国内で活動を続けてきたイギリスの公的国際文化交流機関の支部が、ロシア治安当局の圧力で閉鎖に追い込まれた。英国のロシア専門家は「ロシアはぎりぎりまで攻めてくる」と分析する。英国とロシアの間で今、何が起きているのか。 昨年十二月、ロシア外務省は国際交流機関ブリティッシュ・カウンシルに対し「国際法、ロシア税法を守っていない」として年内にサンクトペテルブルク、エカテリンブルク両支部を閉鎖するよう通告した。カウンシルや英外務省は「法律は順守している。閉鎖する理由はない」と反発、二支部は休み明けの一月十四日から業務を始めたのだが、ロシア連邦保安局(FSB)は翌十五日夜、元英労働党党首キノック卿の長男でサンクトペテルブルク支部長のスティーブン・キノック氏を飲酒運転容疑で一時拘束した。さらに二支部のロシア人職員を一斉に事情聴取するとともに内務省職員が自宅訪問を行ない、翌十六日、二支部は活動停止に追い込まれたのだ。

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