対日輸出がストップし石炭純輸入国に転落へ

執筆者:五味康平2008年3月号

 中国の石炭需給が一段と逼迫し、火力発電用として長年続いてきた日本向け輸出に、赤信号が灯り始めた。 中国は一月中旬から全国的な豪雪に見舞われ、鉄道輸送がマヒ状態に陥り、山西省、四川省など産炭地からの石炭輸送が大幅に減少した。 発電用の石炭在庫が急低下し、沿海部でも工場向け電力供給を絞るなど電力不足が目立っている。そのため、輸出用に集積されていた石炭を急遽、国内向けに振り向け、二月積みから対日供給がストップする事態になっている。 中国の対日石炭輸出は一九七〇年代に始まった長期貿易取り決め(LT)に沿って、毎年、その年の量を決め、五年ごとに契約を更新する。「従来、契約は完全履行されてきた」(関係者)。 だが、中国政府は経済成長や国民生活の安定を重視、国内供給を優先する方針で、一月下旬に「春節(旧正月)や三月初頭の全国人民代表大会開会中の石炭輸出禁止」を打ち出した。 こうした方針は今回限りではなく、長期化するとの説もあり、対日輸出の大幅削減または中止、の懸念も出始めた。 同じLT貿易で契約されていた大慶原油の対日輸出は、国内の石油需要の増加で輸出余力がなくなったことを理由に二〇〇四年に終結。その数年前からたびたび、大慶原油の船積みが中断する事態が起きており、今回の石炭も「一時中断の積み重ねで、近々、対日輸出の幕引きをするつもりでは」(電力業界関係者)との見方もある。

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