「シンガポール総選挙」と中国の「安堵」

執筆者:野嶋剛2015年9月26日

 このほど投開票が行われたシンガポール総選挙で与党・人民行動党(PAP)が勝利を収めた。「ウオッチャーたちのメガネがずり落ちた」(シンガポール紙『聯合早報』)と書かれるほど、予想外の圧勝だったが、当のPAP以外で、この勝利にもっとも安堵したのは、中国の現指導部ではないだろうか。

 どうしてかと言えば、習近平現指導部が恐らく目指している「クリーンで優秀なエリートによる一党支配」のある種の成功モデルが、シンガポールでのPAPの勝利に体現されているからである。

 2011年の総選挙で手痛い勢力減退を喫したPAPは今回、得票率を10%も上積みし、89全議席中、2議席増の83議席を確保した。事前の予測では前回同様の苦戦を強いられるとの観測が目立ったが、ふたを開けてみれば「PAP強し」を再確認するしかない結果だった。

 その主因を2つほど挙げると、早期の解散に打って出て、今年3月に亡くなったばかりの建国の父リー・クアンユーの功績を強調し、シンガポール・サクセスが誰のお陰であるのかを国民に再認識させたこと。もう1つは、前回総選挙での「敗北」の反省から、候補者の選定で、より民衆に近いイメージを持つ人材を多数登用し、世代交代を目指すリー・シェンロン首相の改革姿勢が評価されたことがある。

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