「その後のギリシャ」と「難民ロード」を歩く

執筆者:木村正人2015年9月28日

[ギリシャ、ハンガリー発]9月20日に行われた今年2度目のギリシャ総選挙で、チプラス首相率いる急進左派連合(SYRIZA)が議会第1党を死守して、政権を維持した。これで、さらなる緊縮財政を迫る欧州連合(EU)の第3次救済策が進みだすが、高失業率に苦しむギリシャ国民の「無力感」を悪化させるだけだと心理学の専門家は警告する。債務粉飾の発覚から約6年、緊縮策でギリシャ経済は4分の3以下に縮小した。自由と民主主義が繁栄をもたらすというEUの理念は「負け組国家」に屈辱と絶望を焼き付ける呪いと化している。シリア和平への無策が拡大させた難民危機への対応もギリシャやイタリアに押し付けられ、EU域内では国境が再び強化され始めた。
 
 SYRIZAが政権についた今年1月の総選挙で取材した市民支援団体「KIPODA」を再び訪れた(2015年1月30日「ギリシャ現地レポート:『破綻国家』を救うのは『EU』か『中国』か」参照)。
 チプラス首相が緊縮策の緩和を求めるためEUに示した強硬姿勢と瀬戸際戦術で、ギリシャの金融システムは崩壊寸前まで追い込まれた。KIPODAの事務所は電気が消され、薄暗い。昼間の電気代を節約するためだ。
「チプラス首相には少しだけ夢と希望を抱いていましたが、この8カ月間で起きたことは悲劇でした。電気、電話、水道代を納めるのが精一杯で、スタッフへの給与支払いは止まっています」
 事務局長のパナギョティス・マガロニス氏(42)は肩を落とした。
「選挙にもチプラス首相にも何も期待していません。政権が早く発足してEUからの援助が再開するのを待つのみです」という。8カ月前のKIPODAには活気があった。しかし、マガロニス事務局長の表情は憔悴し、オフィスは意気消沈しているように見えた。

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