習主席が米国で味わった「カノッサの屈辱」

執筆者:青柳尚志2015年9月29日

 笑顔ひとつない強張った共同記者会見だった。鳴り物入りで赤い絨毯を踏んだ中国の習近平主席は、米国の冷ややかな空気に驚いたことだろう。サイバー空間で繰り広げられる死闘と、南シナ海で着々と進む岩礁の埋め立て。米世論の堪忍袋の緒が切れつつある中で、オバマ大統領も中国との間で一線を引かざるを得なくなったのだ。

 9月25日にホワイトハウスで行われた共同記者会見。「オバマ氏は習氏と目を合わせることもなく、笑顔もほとんど見せなかった」(読売新聞9月27日朝刊)。日本の各紙にもそんな表現が溢れている。目を合わせなかったのは、ほかでもない。自らに向けられた米世論の厳しい眼差しを意識し、「ここでニコリとしたら炎上必至」と身構えたからだろう。

 今の米中関係を象徴するように、首脳会談後に共同声明が発表されることはなかった。米中がそれぞれ単独で「成果文書」を公表したのである。それにしても、首脳会談を開いたからには、何らかの成果を上げなければならない。今回、その成果物になったのは、気候変動問題に関する米中の取り決めだった。

 

「南シナ海問題」も成果なし

 サイバー問題での閣僚級協議の場を設けることになったのは、成果でもなんでもない。サイバー空間は陸海空、宇宙に次ぐ第5の戦線と位置付けられる。その戦線で中国は頻繁にテロを仕掛け、米国の官民は巨額の損失を被っている。

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