英領ジブラルタル:海洋帝国の拠点

執筆者:竹田いさみ2015年10月6日

 日本から英領ジブラルタルへは、ロンドンを経由すると約30時間かかる。日本からロンドンに到着するフライトは夕方で、同日中の乗継便がないため、どうしても空港周辺のホテルに一泊する必要があるからだ。とても効率が悪く、しかもホテルの宿泊料金は心臓が止まるほど高い。スペインの南端に位置するため、パリやフランクフルトで乗り継ぐと、最短時間で到着できると想像を膨らませていたのだが、なにせフライトがない。主要なフライトは、ロンドンのヒースロー空港発着のブリティッシュ・エア、もしくはガトウィックやルートンと呼ばれる空港からLCCに搭乗する以外に方法がない。他にモロッコ航空があるが、まずはモロッコに行かなくてはならないので選択肢に入らない。

北西側のスペインから見た「ザ・ロック」(写真はすべて筆者撮影)

 ロンドンから3時間弱でジブラルタルに到着する。機内から1つの巨大な「岩」がみえたが、この「岩(ザ・ロック)」そのものがジブラルタルであった。滑走路が短いため、離発着する旅客機はA-320など中型機に限られる。僅かな平地には集合住宅やビルが隙間なく建てられており、岩場の地形を利用したため道路は曲がりくねり、直線道路はほとんどない。居住人口は約3万人だが、労働者の大半は日帰りで通勤してくるスペイン人だ。
 目の前にイルカが泳ぐジブラルタル湾が広がる。南に目をやるとジブラルタル海峡を航行する船舶が視界に入り、沖合14キロ先にはアフリカ大陸の山々が見える。モロッコは目と鼻の先で、ヨーロッパの終焉は、アフリカの始まりであることを実感する。伊豆半島から大島を見る光景に似ている。

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