森林を守るために必要な間伐作業は、本当に採算が合わないのか。検証を進めると、自治体の主張は音を立てて崩れていく。 まるで燎原の火のごとし。いま、全国の自治体がこぞって新設に走る税金がある。「森林税」だ。二〇〇三(平成十五)年四月に高知県の橋本大二郎知事(当時)が導入して以来、原稿執筆時点で全国の都道府県の半数以上(二十五県)で導入済みまたは導入が決まっている。 自治体によって呼び名は多少異なるが、目的はどこも同じ。荒れた森林を再生させるための間伐費用に充てようというものだ。 間伐とは、成長のよい木を残し、他の木を間引くこと。残した木を高品質な“商品”として育てるためにも、また木と木の間に適度な間隔を空けて日光を差し込ませ下草が生える健全な森林をつくるためにも必要な作業だ。 それはわかるとして、では、なぜ間伐にわざわざ税金を、しかも新たな税制を講じてまでつぎ込まなければならないのだろうか。 自治体側の主張はこうだ。森林の中でも特に整備が遅れているのは個人がもつ民有林。戦後に国策として一斉植林が行なわれたあとは、山林の所有者が自分で間伐をしてきた。伐採した木は薪として使ったり、木材として売るなど、生活の一部として使われた。しかし、所有者や働き手となる親族の高齢化が進み、また燃料が薪からガスや電気に変わって人々の生活スタイルが変化していく中で、山の手入れをする人間は減っていく。外国から輸入される安い木材に押され国内の木材価格が一九八〇年をピークに下落しつづけたこともあり、間伐は進まなくなった。このため、民有林は放置され、もやしのようにひょろひょろと細い木が立ち並ぶ真っ暗な森が広がった。山崩れなどの災害が起きやすい荒れた森林を整備するには、緊急に財源が必要だ――。

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