中国の申請した「南京大虐殺の記録」をユネスコが「世界記憶遺産」として登録したことに対して、菅義偉官房長官は10月13日の記者会見で、ユネスコへの「分担金や拠出金のあり方を含め、支払いの停止等を含めてあらゆる見直しを検討していきたい」と述べた。自民党の外交部会などの合同会議でもユネスコの「分担金」の支払い停止を含む決議を10月14日に採択した。

 この騒動はメディアでも大きく取り上げられ、ツイッターなどのSNSでも大きな話題となった。海外メディアは批判的に取り上げた。多くの場合、菅官房長官の発言をユネスコに対する「脅迫」と受け止め、日本の過去の対ユネスコ政策を揺るがす外交的なミスだと見ているようだ。筆者も資金をテコにユネスコを動かそうという意図に疑問を持つし、実際、そうした政策がうまく行った試しもないので、お世辞にも上策とは言えない。

 しかし、日本が申請したシベリア抑留の記録に対し、ロシアからの非難を受けたことで、結局ユネスコの「世界記憶遺産」を政治的な目的でもてあそぶことが様々なリスクをはらむものだという見方も広まり、この「南京大虐殺」をめぐる議論は徐々に沈静化しつつある。ここでこの騒動について5つのポイントから考えてみたい。

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