人びとの「無関心」を呼んだ「大統領の結婚」

執筆者:大野ゆり子2008年3月号

 フランスのサルコジ大統領が、噂の恋人カルラ・ブルーニさんと結婚した日、ちょうどパリにいた。土曜日の昼下がりである。第一報はインターネットで知った。日本でもさんざん報じられたのではないかと思うが、ブルーニさんは数億円の収入があった元スーパーモデルで、イタリアの資産家の娘。今は歌手である。サルコジ大統領は、昨秋、やはり元モデルの夫人と離婚したばかり。 この前夫人との出会いも、とても変わっていた。ヨーロッパの役所での結婚式は、日本よりも、セレモニーとしての演出が強い。日本では窓口に婚姻届を出すだけだが、こちらでは、市長が正装してカップルを祝福し、ふたりが家族や友人の前で、その場で結婚の証明書にサインする。サルコジ大統領は、以前パリの近郊、ヌイイー市の市長をしていたが、その時代に自分が司った結婚式に現れた花嫁に一目惚れ。何年もかけて交際をはぐくみ、この花嫁を妻にした。映画のようなロマンスという考え方もあるが、市長の熱い視線が仕事中に花嫁に注がれるところは、日本ではちょっと考えられない。このとき、もし隣の市で結婚していたら、と花婿さんは後で悔やんだのではないか。 フランス大統領が在任中に結婚したのは、第五共和制では初めてだそうで、さぞかし大騒ぎなのではと町に出てみた。

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