21世紀の独善社会主義

執筆者:名越健郎2008年3月号

 マルクスに召される日が近付いたキューバの反米独裁者フィデル・カストロ議長の後継者は、間違いなく南米産油国ベネズエラのカリスマ政治家ウゴ・チャベス大統領(53)だろう。 軍人出身で、敬虔なカトリック教徒。1998年に貧困層の支持で大統領に当選。「21世紀の社会主義」を掲げて外国資本追放、産業国有化を断行し、石油の富を貧困層に分けて喝采を浴びてみせた。選挙戦では「社会主義か、死か」という社会主義運動家ローザ・ルクセンブルクの懐かしいスローガンをスペイン語で絶叫した。 チャベス大統領は昨年12月、終身大統領を目指して大統領再選規制撤廃の改憲案を国民投票に付したが、僅差で却下された。国民がお灸をすえた形で、大統領は中国の革命家孫文ばりに「革命未だならず」と嘯いた。一方で軍・警察を基盤に反体制派を抑圧する社会主義独裁を固めつつあるようだ。 チャベス大統領が師と仰ぐカストロ議長に尋ねた。「恒久政権を樹立するには、どうしたらいいですか」「簡単だ。20世紀の社会主義に戻すことだ」 問 20世紀の社会主義と21世紀の社会主義の違いは何か? 答 20世紀の社会主義は銃口で達成される。21世紀の社会主義は石油で達成される。

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