崔龍海氏の解任理由として、発電所問題以外でまず考えられるのは不正腐敗だ。崔龍海氏は長く青年組織のトップを務め、北朝鮮指導部の間でも、青年団体の代表として最も数多く海外旅行に出て、西側文化に最も多く接した人物の1人だ。

金色の腕時計

 身につけているものも西側のブランド品が多いという話もあった。崔龍海氏は昨年11月に金正恩第1書記の特使としてロシアを訪問し、同20日にラブロフ外相と会談した。これを報じた香港のフェニックステレビは、崔龍海氏が外交儀礼を破ってホストより先に発言したことを批判的に報じながら「崔氏の左腕に光り輝く金色の腕時計がとても目立った」と報じた。このフェニックステレビの報道の真意がどこにあったのかはよく分からないが、写真を見るとなるほど金色の腕時計が目立っている。
 李英鎬総参謀長や先輩格であった張成沢党行政部長の粛清を身近で見ていた崔龍海氏が金正恩第1書記に反抗的な姿勢を示す可能性はまずないだろう。しかし、北朝鮮では有数の名家の出身で、幼いときから恵まれた環境で育ち、培われてきた贅沢癖は簡単に直るものではなく、不正腐敗から縁遠い人物とは言いがたい。
 また、北朝鮮では、本人が気にしていなくても、ちょっとしたことが摘発の対象になる。たとえば、海外に密かに銀行口座などを持っていた場合「亡命の準備」という風に攻撃を受ければこれを逃れるのは難しい。崔龍海氏の失脚の理由は不明だが、筆者には最も可能性の高いのは不正腐敗の疑いではないかと思われる。

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