南シナ海をめぐる米中対立にからみ、最近、自民党の野田聖子衆院議員が「直接日本と関係がない」と語ったことについて、「失言だ」という批判が集まった。野田議員は自民党のベテラン女性議員で、日本で初の女性首相に最も近い1人と目されている。その政治的主張はハト派で安倍首相とは一線を画しており、9月の自民党総裁選挙でも唯一、安倍首相の無投票再選に異を唱えようと出馬を目指し、注目された。

 野田議員の発言について、安全保障問題に理解がなさすぎる、米国が南シナ海に艦艇を派遣した深刻さを理解していない、など、主に外交論や安保論から疑問が向けられた。野田議員が対中関係を重視するために南シナ海について当面中国への批判を封印すべきだという考えで語ったのであれば、筆者の考えとは違うが、それはそれで1つの立場であると受け止めることができる。ただ、もしも日本と南シナ海との深い関わりを念頭に置かずに語ったのであれば、それは残念ながら歴史に対する誤認があると言えるだろう。

 なぜなら、南シナ海の島々の領有問題や資源問題は、明治維新以降、「南」を目指した日本近代史の重要な一部であり、今日の領有をめぐる混乱についても、日本には歴史上の「責任」が少なからず存在しているからだ。

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