沖縄を「台湾化」させる「辺野古」問題

執筆者:野嶋剛2015年12月17日

 沖縄の海兵隊辺野古基地建設をめぐる日本政府と沖縄県の対立で、埋め立て工事の是非を論じる法廷での戦いが福岡高裁那覇支部で始まった。しかし、沖縄の勝ち目は薄い。沖縄問題とは何か、という論点で戦ってこそ沖縄県には戦いようがあるし、口頭弁論で翁長雄志知事は、日米同盟や沖縄の基地負担のあり方そのものを問いただす論陣を張った。しかし、日本の司法は、こうした沖縄問題の本質論については「統治行為論」という理由によって長年判断を放棄してきている。国の主張の通り、埋め立て工事の許認可に関する手続き論に論点を絞られてしまうと、国の勝率はどうしたって高くなるだろう。

 しかし、この辺野古問題の主戦場は、決してこの法廷ではない。主戦場はあくまでも、辺野古移設に反対する翁長県政=「オール沖縄」体制を安倍政権が崩せるかどうかである。そして、「オール沖縄」の背後にある「沖縄アイデンティティー」を、日本政府が分断し、弱体化できるかが問われているのである。

 

沖縄は「台湾化」の初期段階

 現在の沖縄で起きている事態は、もともと日本の一地域である沖縄が、基地問題を主な理由として沖縄アイデンティティーが強化され、それが自然の帰結として「ナショナリズム」にも目覚めて、自己決定権をいっそう求める動きだと考えることができる。

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