朝鮮半島ウォッチャーにとって「12月12日」と言えば、1979年12月12日の「シビ・シビ」だ。「シビ・シビ」とは「12.12」の韓国語の発音だ。朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が1979年10月26日に側近の金載圭(キム・ジェギュ)韓国中央情報部長(KCIA部長)に暗殺され、韓国政局は不透明な状況に陥った。政権掌握を目指した全斗煥(チョン・ドゥファン)陸軍少将(軍保安司令官)は1979年12月12日に総参謀長公邸を急襲し、上官である鄭昇和(チョン・スンファ)陸軍総参謀長を逮捕した。全斗煥少将はこの下克上で権力掌握に向かい、このクーデターは「粛軍クーデター」と呼ばれる。
 しかし、今年の「シビ・シビ」(12月12日)に、北朝鮮を取り巻く状況に大きな影響を与える2つの「事件」が発生した。1つは北朝鮮の女性音楽グループ「牡丹峰楽団」と「功勲国家合唱団」が当日になって北京での公演を中止し、帰国してしまった件だ。もう1つは北朝鮮の開城で行われた南北当局者会談が決裂、次回の会談日程も決まらなかった件だ。北朝鮮を取り巻く情勢は8月25日の南北の「8.25合意」以降、状況安定の方向で推移していただけに、2つの「事件」は中朝関係の修復、南北関係の前進に冷水を浴びせた。北朝鮮は来年5月の第7回党大会に向けて、経済建設に邁進できる「平和的な環境」づくりに向かうのではないかとみられていたが、2つの事件は金正恩(キム・ジョンウン)政権の予測困難性を再び浮かび上がらせた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。