次期中国大使人事「日本重視」は本当か?

執筆者:村上政俊2015年12月28日

 習近平指導部が知日派外交官(邱国洪駐韓国大使)の駐日大使起用を検討しているのは日中関係重視の表れだ――という解説が12月第3週の一部新聞紙上に躍った。中国に気配りした、いわゆる左派的配慮が働いての結果であれば、単なる「提灯記事」と片付けられるが、心底からの分析なら、大手新聞の外交音痴ぶりを垣間見ることができる一件なのかもしれない。

 

「大物大使」の3要件

 大使人事は、時の各国政府が相手国との2国間関係をどれくらい重視しているかの写し鏡だ。米国を例にとると、駐英大使経験者からは、モンロー主義で著名なモンローら5人の大統領が輩出しており、駐仏大使には、現行100ドル札紙幣の肖像であり避雷針を発明したベンジャミン・フランクリンがいた。
 そもそも「大物大使」の要件とは次の3つのうちのどれかに該当する場合だろう。①著名人・有力政治家、②首脳との個人的信頼関係が厚い側近・腹心、③各国外務省のエース級の3つだ。一方で、各国駐日大使の中には、日本語に堪能であったり、駐日大使館での勤務経験が豊富であったりするいわゆる「ジャパンスクール」出身の外交官も多いが、単にジャパンスクール出身というだけでは「大物大使」の要件を満たしているとは言い難いだろう。外務省非エース級のジャパンスクール出身大使は④と分類しておく。

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