2016年を迎えるいま、内外でブラックスワンの不気味な羽ばたきが聞こえる。2012年末の政権復帰から丸3年を経過した安倍晋三首相は「桃栗3年」の成果を誇った。が、今は申年の世界に待ち受けているリスクにこそ、身構えるときではないのか。

 サウジアラビアは12月28日、2016年の予算を発表した。原油価格の低迷を受け、石油関連の歳入が全体の7割を占めることから、財政赤字は日本円で10兆4000億円を上回る見通しだ。赤字の補填のため国債発行や対外資産の売却のほか、付加価値税の導入も検討しているという。

 予兆はあった。11月下旬、ロイターはドバイ発で「サウジアラビアの通貨切り下げ」観測の記事を流した。サウジの通貨リヤルは1ドル=3.75リヤルでドルに固定されている。この記事はサウジ当局と取引のある金融機関に取材して、切り下げ観測を冷静な筆致で否定しているが、火のないところに煙は立たない。

 いくつかの気がかりな出来事が起きている。その1つが、サウジのクレジットデフォルトスワップ(CDS)のプレミアム。フィリピンのそれを上回ったというのだ。

 CDSとは、企業や政府が債務不履行になった場合に、貸したカネが焦げ付かないようにするための「倒産保険」である。そのプレミアム(保険料)は、企業や政府の懐が怪しくなるほど高くなる。国際金融市場ではサウジの懐事情の方が、フィリピンよりも厳しいとみていることになる。オイルマネーの札びらを切る金満家に一体何が起こっているというのか。

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