12月6日のベネズエラの議会選挙で野党が3分の2を超す絶対多数を獲得、10日にはアルゼンチンで右派のマクリ政権が誕生するなど、中南米の左派政権の退潮が注目を浴びた。今後2010年代の後半にかけての中南米の政治構図の転換を占うような出来事が相次いだ。ちょうどその時期に、左派政権と対極にある南米の「太平洋同盟」3カ国を訪問していた筆者は、現地の政治変化に寄せる熱気と大きな期待感を肌で感じた。

投票のもつ威力

 アルゼンチンは夫婦での政権継承を挟んで12年にしてキルチネル政権は終焉、ベネズエラはチャベス亡きチャベス体制を含む17年にして初めて野党に惨敗するという、左派長期政権の黄昏とも言える現象である。両国とも長期にわたるいわゆる「競争的権威主義体制(Competitive Authoritarianism)」のもとにある。これは、選挙という民主的手続きを維持しつつも、政権による権力の乱用を伴なう権威主義的性格を残す折衷的な体制のことである。野党指導者逮捕などの妨害工作や政府資金の総動員など、野党にとって決して公平で透明な選挙が保証されたわけではないが、野党との権力到達を争う競争という選挙制度が一定程度機能する限りにおいて起こり得る、投票のもつ威力を改めて思い知らされる政変であった。
 アルゼンチンではペロン党が予想に反して決選投票で敗れたこと、さらにベネズエラに至ってはチャベス派が1998年に政権獲得後初めて野党に惨敗を喫し、なおかつ国際注視の中で選挙結果をマドゥロ政権が受け入れたことは、驚きとも言え、両国とも今後大きな政策転換が予想される。

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