軍政長期化で沈む「タイ経済」に明日はあるか

執筆者:新田賢吾2016年1月18日

 東南アジア諸国連合(ASEAN)の優等生として成長し、自動車、電機・電子などでASEAN随一ともいえる産業集積を築いたタイが停滞感を深めている。数年前、ブームの様相を示していた消費は落ち込み、外資の投資も急減速した。2014年5月にクーデターでインラック政権を倒し、権力を握った軍政が強権体質を露わにし、国内に暗い影を落とす一方、ベトナム、カンボジア、ミャンマーなど周辺国が外資の投資を吸引、タイの地位を脅かしつつあるからだ。政治状況からみれば軍政に出口はなく、軍政が急接近した中国も救世主にはなっていない。4000社を超える現地進出の日本企業は静かにタイ投資を見直し始めている。

 

停滞招いた「4つの原因」

 タイ経済は成長率こそ2015年7~9月期に前期比1.0%増(前年同期比2.9%増)とやや持ち直しの様子も示したが、実態は政府の大型公共工事が15.9%増と大幅に伸びた効果によるもので、民間消費は1.7%増と微増にとどまり、民間設備投資は6.6%減と落ち込んだ。最大の産業であり、国内消費を牽引する自動車は、2015年11月の新車販売台数が4.6%増と31カ月ぶりにプラスとなったものの、通年でみれば10%超の前年比マイナスの見込み。輸出も、10月は前年同月比8.1%減と10カ月連続の前年割れ。日本や欧州、ASEAN向けが2ケタのマイナスのうえ、頼みの中国向けも3.6%減となった。

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