日銀「債務超過」という「悪夢のシナリオ」

執筆者:鷲尾香一2016年1月22日

 日本銀行は昨年11月13日、「引当金制度に関する検討要請について」なる文書を発表した。その内容は、「『量的・質的金融緩和』の実施に伴って生じ得る日銀の収益の振幅を平準化し、財務の健全性を確保する観点から、麻生太郎財務大臣に対して、引当金制度による対応の検討を要請した」というもの。この発表は、マスコミの取り上げ方も小さく、市場でも話題にはならなかった。

 だが、これは黒田東彦総裁の進める「量的・質的金融緩和」(以下、異次元緩和)により、日銀の財務が不健全になりつつあることを自ら吐露したものであり、非常に重大な意味を持つ。そして11月20日、閣議において日銀の引当金積み増しを可能にする政令改正が決定した。これにより、日銀は異次元緩和の実施に伴って生ずる損失に対して、引当金を積むことが可能になった。

 

異次元緩和で積み上がった「超過準備預金」

 では、「異次元緩和の実施に伴って生ずる損失のための引当金積み増し」とはどのようなものなのか。

 日銀自身は、「法定準備預金(以下、準備預金)のうち、超過準備預金額に相当する分の保有長期国債の利息収入」から「超過準備預金に対する利払い費用」を差し引いた利益の50%をメドに引当金の積み増しが可能、と説明している。

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