安倍晋三政権が「コーポレートガバナンス」の強化を政策の柱に据えてきたことで、日本企業のガバナンス体制は大変化を遂げた。社外取締役導入の是非が議論されていたのはつい2年前の話だが、いまでは社外取締役を置かない上場企業は珍しくなった。

 東京証券取引所の調べでは、市場1部に上場する企業のうち社外取締役を置いている会社は、2013年の62.3%から2015年は94.3%にまで高まった。独立性の基準をクリアした「独立社外取締役」を2人以上置いている会社も、18.0%から48.4%に急増した。

 2014年春は企業が雪崩を打って社外取締役導入に動いた年だった。同年改正された会社法では、社外取締役の設置は経団連や全国銀行協会の反対によって義務付けされなかったが、社外取締役を置かない場合には、「置くことが相当でない理由」を株主総会で説明することが義務付けられた。また、当時法務大臣だった谷垣禎一氏が、国会答弁で「事実上の義務化という評価は十分可能だと思っています」と述べたことから、社外取締役は一気に企業に広がっていった。

 中でも、それまで社外取締役導入に反対してきたキヤノンや新日鉄住金、東レなどが一転して社外取締役を置くことを決めたのが、流れを決定づけた。キヤノンは12月決算のため一足早い3月に株主総会が開かれたが、そこで社外取締役2人を選任した。前年の役員選任議案では72.21%にとどまっていた御手洗冨士夫会長兼社長兼最高経営責任者(CEO、当時)への賛成票は90.08%に上昇。社外取締役選任が機関投資家など株主の声であることが如実に明らかになった。

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