2月7日に行われた独仏会談の趣旨は、2月18-19日に予定される欧州首脳会議に向けての意見調整が目的であったが、大量に押し寄せる難民対策と、6月に実施が見込まれるEU残留を問うイギリスの国民投票が喫緊の論点である。
 人が移動するのでさまざまな数字が出ているが、欧州対外国境管理協力機関(FRONTEX)によると、トルコ経由だけでも1日2000-3000人の難民の流入があるといわれ、その多くが密入国ともみられている。最重要な論点はギリシャとトルコでの難民受け入れの制限である。
 杜撰な入国検査で、大量に難民を受け入れていると強い批判を浴びているギリシャに対しては、加盟国間の「人の移動の自由」を約束した「シェンゲン協定」から離脱させようと提案する声もある。ギリシャとトルコの難民受け入れの監視体制の強化はずっとEUの課題とされてきた。それがここにきてようやく進みつつある。独仏会談でも難民検査体制の厳格化と適切化のために、入国検査の施設(ホット・スポット)を新たに4つ増設することで合意した。
 しかし難民制限をする一方で、申請のために入国した不適格者を送還することも同時並行で進めていかねばならない。最優先されてきたシリアに加えてイラク、パキスタンからの難民は別として、それ以外の国からの入国者は帰国させる措置もとられている。「(帰国しても)安全な国」を指定し、難民検査にはねられた人々は迅速に帰国させる。ドイツではマグレブ3国、ギリシャではトルコがこうした「安全な国」と指定された。実際、国連高等弁務官事務所(UNHCR)の報告では、難民の多くが旅費の支出可能な裕福な家庭の人間で、都市住民、また学位保有者で身体健全な人物であり、男性が78%を占める。いわゆる職を求めた「経済難民」ということができる。EUではこうした経済難民は受け入れない。

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