李明博は韓国経済の「矛盾」を解消できるか

執筆者:深川由起子2008年4月号

マクロはいいのに景況感は最悪――前政権のツケ解消を、国民は新大統領に望む。『野望の歳月』再現はなるか。 かつて『野望の歳月』という韓国テレビドラマがあった。現代グループを模した設定で、グループ総帥を補佐し次々に襲う難局に辣腕を振るう人物、そのモデルがかつて現代建設社長を務めた李明博新大統領である(役を演じた俳優・柳仁村氏は李政権で文化観光大臣に就任)。 韓国国民の新大統領への期待は明快だ。「成長への回帰」である。 初めての南北首脳会談を実現した金大中政権からバトンを引き継いだ盧武鉉政権は民族主義イデオロギー全開の政権であり、経済への関心は希薄だった。金大中政権末期になりふり構わぬ内需振興策としてクレジットカードが乱発され、その結果として家計が大きな負債を背負い込んだことへの反動もあり、盧武鉉政権の経済運営の原則は「人為的景気浮揚策はとらない」であった。そのうえで政策の焦点は新自由主義型改革の副作用とみられた所得格差の是正に当てられた。 しかし、社会福祉の拡充を進める一方で、支持基盤だった労働組合の不法行為にはメスを入れられず、企業は非正規雇用の比重を増やすことで労組の既得権に対抗した。格差是正に向けてやみくもに繰り出された不動産規制は価格形成を歪め、むしろ投機を助長して庶民を苦しめた。労組の要求や地価高騰による高コスト構造に加え、大企業を「社会正義の敵」とみなしがちな政権の下で、企業の設備投資意欲は萎縮した。他方、不動産規制に不満を持つ富裕層の消費は、ウォン高の昂進もあって海外に向かい、内需沈滞が加速した。

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