米太平洋軍司令官は中国をどう見ているか

執筆者:リチャード・ハロラン2008年4月号

軍備拡大を続ける中国に対し、アメリカの“対中政策”の最前線に立つキーティング司令官は「静かな圧力」をかけている。[ホノルル発]歴史に名高い真珠湾の海軍基地が眼下に広がる米太平洋軍司令部の司令官室。ほぼ真西に向いた大きな窓の前に立ち、もし地表の湾曲を超えて西の海をどこまでも見はるかすことができるならば、この部屋の主、ティモシー・キーティング海軍大将がまず視線を向けるのは、台湾海峡だろう。中国と台湾が対峙し、アジアで最も危険な紛争の火種を孕む海峡だ。 キーティング司令官率いる米太平洋軍は、中国と台湾の緊張が戦争行為へと突き進む事態を回避させる責務を負っている。中台が戦火を交えれば、たちまちアメリカも大きな戦争へと巻き込まれるからだ。太平洋地域における陸、海、空軍と海兵隊の四軍を統率し、在日、在韓米軍も傘下に置くキーティング司令官とそのスタッフは、不測の事態を招かぬように、その対策の立案にかなりの時間を費やしている。というのも、彼らは軍事に限らずアメリカの対中政策全体の立案に、大きな役割を担うようになっているからだ。これには二つの理由がある。 第一に、中国は経済発展が燃料となり、その軍事力は拡大につぐ拡大を続けているため、いまや安全保障問題が米中関係の最重要課題となっていることだ。経済分野での問題は、アメリカが二〇〇七年に記録した二千五百六十億ドルにのぼる対中貿易赤字に絞られている。この赤字額は、対日貿易赤字のほぼ三倍に相当する巨額なものだが、それを除けば両国間に経済的な難題があるわけではない。また、外交分野においては、北朝鮮の核兵器開発を阻止することが米中間の主たる課題だ。

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