フィリピン大統領選の投票が5月9日行われ、日本時間10日朝の非公式の開票速報では、90%の開票率でダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏がほかの候補者を約600万票以上引き離しており、当選が確実となった。ドゥテルテ氏は、6月末に任期満了を迎えるベニグノ・アキノ大統領に代わって、フィリピン大統領に就任する。一方、別々に行われた副大統領選では、マルコス元大統領の長男であるフェルディナンド・マルコス上院議員とレニ・ロブレド下院議員の大接戦が続いている。強権的手法も辞さない「鉄拳」の政治を掲げるドゥテルテ氏の登場で、マルコスを倒した1986年のピープルパワー革命からちょうど30年という節目に、フィリピン政治は今後の展開を予測しにくい難局面に入ることになる。

「私設処刑チーム」を秘密裏に組織?

 ドゥテルテ氏は、マニラの中央政界では政治経験を持たない。ダバオは南部ミンダナオの中核都市であるが、日本で言えば、愛知県や神奈川県、福岡県、北海道あたりの知事が突然、首相になるようなものだろうか。

 ただ、当人のイメージは、いかにも荒っぽい武闘派の地方ボスである。マニラのエリート、改革派、親米を特徴としたアキノ政権に対して、ドゥテルテ氏は、庶民派で地方出身、犯罪・腐敗を強権によって取り締まることを売りにしてきた。つまり、まったく個性や背景の異なる政権が生まれることになる。

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