スイスで6月5日、「ベーシックインカム」導入の是非を問う国民投票が行われ、大差で否決されたことが日本でも話題になっている。ベーシックインカムは国民に毎月一定額の現金を無条件に給付する制度で、フィンランドなどでも導入論議が起きている。格差が広がる傾向にある現代社会で、貧困層を作らないための施策として世界的に関心が広がっているのだ。

 

80%弱が反対

 そんな中、スイスで国民投票にかけられたのは、成人に対して毎月2500スイスフラン(約27万円)、未成年には625スイスフラン(約6万8000円)を支給するという提案。スイスが直接民主制の制度として保証しているイニシアティブ(国民発議)を使って民間団体から提案され、最低限必要な10万人を超える署名が集まったことから、国民投票で賛否が問われた。

 提案に対して、連邦政府と連邦議会は一致して反対の態度を示していた。その理由として、連邦政府は「ベーシックインカムの導入がスイス経済と社会保障システムの弱体化につながると強く確信する」とし、「働こうとする人が減少しかねず、現状の労働力不足と技能低下を悪化させる」とした。無条件で一定額を支給することが、競争を阻害して経済全体にマイナスの影響を及ぼすとしたのである。

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