クラウドファンディングを活用しよう

執筆者:成毛眞2016年6月23日

 クラウドファンディングがブームになりつつある。いわば、ネットで投げ銭を募る仕組みだ。「こういうプロジェクトを行います」「こんな商品をつくります」といった宣言をした人に対し、応援したいとか投資したいと思った人が、いくらかずつを提供するというもの。見返りを期待しない寄付型や、それによって実現するサービスや商品を優先的に入手できる報酬型などがある。つまるところ、資金不足の人が、余剰金を持つ人からの提供で、「ちりも積もれば山となる」式にお金を集め、目的を果たすのだ。
 同じようなことが、アイデアでもできるのではないかと私は考えている。集めるのはお金ではなく、文殊の知恵を生みだす人である。
 かつて鉱山の世界であったことを紹介する。鉱山はだだっ広い。そこに金などの鉱物があることは分かっていても、広大なエリアのどこからどのように採掘を進めるかで、得られる果実の大きさは異なる。当然のことながら、鉱山各社はその効率を競いつつ、効率アップのための施策は企業秘密とするのが当たり前であった。
 ところが2000年にカナダの鉱山開発会社ゴールドコープが非常にユニークな試みをした。過去のデータをすべて開示し、今、開発中の鉱山のどこに金が埋蔵されているか、どのような採掘をしたら効率がいいか、世界中の人々に尋ねたのである。もちろん、報酬も用意した。1位の賞金は10万5000ドル。この「ゴールドコープ・チャレンジ」と名付けられたアイデアコンテストには、多くの地質学者などが参加した。このエピソードは、トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』で紹介されているので、ご存じの方も多いだろう。結果としてゴールドコープは、採掘量を10倍にする一方で、コストを約6分の1に抑えることに成功した。総額で6000万円を超える賞金も、この効率化のためには些細な投資に過ぎなかった。
 1980年代の日本でも、高度な専門知識やスキルを持つ人からアイデアを広く集め事業化し、成功に導いた例がある。
 自ら立ち上げた会社で公団住宅の空き部屋情報を載せた冊子の配布事業を行っていた青年が、新規事業としてゲームの開発を思い立つ。そこでプログラマーを発掘するため「ゲーム・ホビープログラムコンテスト」を開催した。集まった腕自慢の中から、後に大ヒットする『ドラゴンクエスト』シリーズをつくるゲームクリエイターが誕生する。コンテストを仕掛けたのは、現在、スクウェア・エニックス・ホールディングス名誉会長の福嶋康博氏である。

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