「スーパー・セントラルバンカー」として世界にその名を知られたインド中央銀行(RBI)のラグラム・ラジャン総裁(53)の突然の「任期延長辞退」は、インド国内に驚きと失望をもたらした。背後には政治的な駆け引きや思惑もありそうだが、モディ政権が結果的にラジャン総裁を続投させられなかったことで、海外の企業や投資家、エコノミストらによるインドへの信頼が大きく揺らぎ、株価下落や資金流出につながる可能性も指摘されている。

 

与党重鎮の「口撃」

 ラジャン続投を巡る議論の口火を切ったのは、商工相や法相などを歴任した与党インド人民党(BJP)の重鎮、スブラマニアン・スワミ上院議員(76)だった。スワミ氏は5月中旬、9月に任期切れとなるラジャン総裁について、「センシティブな金融情報を海外に漏洩させた」「米国べったりの政策で金融秩序を崩壊させた」「高金利政策を続けて中小企業に打撃を与えた」などと強く批判、モディ首相に対してラジャン氏の任期延長を認めないよう要求する書簡を送った。

 インド経済界の総意としてはラジャン総裁率いるRBIの政策を高く評価しているが、一部製造業や、BJP支持者が多いとされる中小企業経営者には、さらなる利下げを要求する声があるのも事実だ。

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