日本国債の危機がヒタヒタと迫ってきている。きっかけは、安倍晋三首相による6月1日の消費税率10%への引き上げ再延期宣言だった。これにより、2020年にプライマリー・バランス(基礎的財政収支)を黒字化するという政府の国際公約の実現が困難になるとの見方が強まり、大手格付け会社による日本国債の一斉格下げが始まるとの懸念が出てきたのだ。

 

「B格」への転落も

 真っ先に動いたのは、日本経済新聞グループの「格付投資情報センター(R&I)」だった。同社は6日、消費増税再延期により「財政再建の先行き不透明感が高まった」との理由から、日本国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げたと発表した。もっとも、格付け自体は上から2番目の「AA+」に据え置いており、高い格付けを継続している。どうやら、海外の大手格付け会社に先駆けて“ガス抜き”を行ったような節がある。

 実際にその後、大手格付け会社で日本国債の格付け引き下げに動いたところは、今のところない。

 しかし、2014年11月に消費税率10%への引き上げを延期した前回は、大手格付け会社の「ムーディーズ・インベスターズ・サービス」(以下、ムーディーズ)、「スタンダード・アンド・プアーズ」(以下、S&P)、「フィッチ」の3社すべてが、1年以内に日本国債の格下げを行った。その結果、現在の格付けはムーディーズがA1、S&PがA+、フィッチがAとなっている。

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