尖閣「接続水域」侵入は中露連携だったのか

執筆者:村上政俊2016年6月21日

 6月9日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の接続水域に中国軍艦が初めて侵入。ロシア軍艦の侵入も同時間帯に発生し、中国の尖閣に対する挑発は新たな段階を迎えた。本稿ではその背景を読み解いていく。

孤立感深める中露

 平成27年9月3日、プーチン大統領の姿は北京にあった。安倍晋三首相、オバマ大統領始め日米欧主要国の首脳が、日本という特定の国を標的にした形式に反発し、軒並み欠席した抗日戦争の勝利を記念するという軍事パレード。プーチンは、出席した数少ない外国首脳の中でも習近平国家主席の隣という最上席を中国側から宛がわれ、閲兵に臨んでいたのだ。
 この日、天安門の楼上に現れたのは、国際刑事裁判所が逮捕状を発行しているスーダンのバシール大統領といった国際社会の鼻つまみ者か、韓国の朴槿恵大統領、ラオスのチュンマリー国家主席といった中国の強い影響下にある周辺国の首脳ばかり。歴史認識を巡る国際的な対日共同戦線を形成しようという中国の企みはあえなく失敗に終わったのだった。
 遡ること4カ月、似た光景がモスクワで展開されていた。同じく第2次世界大戦の終結から70年を記念してロシアも赤の広場で軍事パレードを開催。人民解放軍も初参加して中露の軍事協力が誇示されたが、G20首脳の出席は習近平のみという天安門広場以上の惨状だった。10年前の60周年記念には、小泉純一郎首相、ブッシュ米大統領、シラク仏大統領、シュレーダー独首相らが戦時中の連合国と枢軸国という垣根を越えて出席して歩きながら談笑する姿も見られた一方、胡錦濤国家主席は地味な扱いだったのがまるで嘘のような激変ぶりだ。
 2つの式典は、現在の中国とロシアの国際社会での立ち位置を絶妙に映し出している。中露両国は、日米欧を中心とする現在の世界秩序を破壊しようと、中国は東シナ海、南シナ海での海洋進出、ロシアはクリミア併合という力による現状変更への道を突き進んでいる。しかし、後ろを振り返っても、付き従うのは中国の経済力に縋るしかない中小国のみ。両国は孤立感を深めつつも、恃(たの)む相手は互いしかないということを自ら主催した軍事パレードのお寒い出席簿で思い知ったのだった。

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