ついに正式に指名を受けた正副大統領候補(C)AFP=時事

 

 7月18日からオハイオ州クリーブランドで開催されている共和党全国党大会の2日目に代議員による投票が行われ、実業家兼テレビパーソナリティのドナルド・トランプ氏が大統領候補の指名獲得に必要な全代議員の過半数1237名を大幅に上回る1725名を獲得し、遂に同党の大統領候補に指名された。副大統領候補についても、トランプ氏が指名した保守派のマイク・ペンス・インディアナ州知事が正式指名された。党大会最終日の7月21日に指名受諾演説を行って、「トランプ共和党大統領候補」が正式に誕生する。今回の共和党大統領候補指名獲得争いには17名もの候補が乱立し、当初は泡沫候補としてしか見られていなかったトランプ氏だったが、結果的には共和党大統領候補の立場を射止めることとなった。

 

主流派有力者が軒並み欠席

 だが、トランプ氏の指名獲得は全国党大会においても順風満帆ではなく、今後厳しい局面に直面し得ることを示したとの印象を筆者は受けた。

 党大会初日には、反トランプ派の代議員がトランプ氏の指名獲得を何とか阻止しようと指名選出方法の変更を求め、いきなり初日から会場が騒然となるなど、党内での亀裂が鮮明になった。また、3日目には指名獲得を争ったテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)が20分余り演説を行ったが、事前にトランプ氏支持を表明するよう党内から圧力があったにもかかわらず、支持を表明することはなく、トランプ氏を支持する代議員らから抗議のブーイングを受ける異例の事態となった。しかもその亀裂は会場での反トランプ派代議員の抵抗やクルーズ上院議員のトランプ氏支持表明の拒否だけではなかった。共和党エスタブリッシュメント(主流派)の政治家が相次いで欠席したことも、亀裂の深さを印象付けた。ジョージ・H.W.ブッシュ元大統領、ジョージ・W.ブッシュ前大統領といった歴代大統領や、2008年のジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)、2012年のミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事といった歴代の大統領候補も軒並み欠席した。第114議会(2015年1月~2017年1月)には共和党上院議員が54名在職しているが、約3割に相当する上院議員が全国党大会に姿を見せていない。とりわけ、トランプ候補と距離を置こうとする姿勢は、マーク・カーク上院議員(イリノイ州選出)やマケイン上院議員ら今年秋に改選期を迎え、再選に向けて苦戦を強いられている上院議員の間で顕著となっている。

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