消費者の安全を確保するには、どのような「一元化」が理想的なのか。そうした本筋の議論の前に、例によって“官の屁理屈”が立ち塞がる。 首相官邸の二階にある小ホール。緑の絨毯に瑞穂の意匠があしらわれ、土の塗り壁にはススキをモチーフにした模様が刻まれている。毎週月曜日と木曜日に事務次官会議が開かれるこの空間で今、彼らが猛反発する新組織の案が練られている。「消費者庁(仮称)」。福田康夫首相の肝煎りで設置された消費者行政推進会議は五月までに最終報告書をまとめる。名称こそ未定だが、狙いは明確だ。各省庁から消費者行政にかかわる部署と権限をひきはがし、ひとつにまとめて政策の企画立案や法執行、省庁への勧告まですべてを担当させようというのである。 相次いだ食品関連の偽装事件を受け、福田首相は就任から一カ月後の昨年十月二十六日、消費者保護の拠点ともいえる独立行政法人「国民生活センター」を首相として初めて視察。翌月からは、消費者行政を転換させるべく、内閣府国民生活審議会を舞台に検討を始めさせた。筆者は安倍晋三政権下で審議会(内の安全・安心検討委員会)の一員を務め、福田政権下でも臨時委員として参画。首相の狙いと意気込みを間近に感じてきた。

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