世界に衝撃を与えた米大統領選挙。ヒラリー・クリントン前国務長官の敗因は、数字で見ると明らかだ。
 第1に「ラストベルト」(重厚長大産業が錆び付いた地帯)と呼ばれる激戦州、ペンシルベニア、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシンですべて負け、選挙人64人を失ったこと(ミシガン州は暫定結果)。
 第2に投票率が低く、前回2012年のオバマ大統領の得票数に大きく及ばなかったこと。特に黒人、ヒスパニックなどのマイノリティの得票率が前回より目減りした。
 では、双方に選挙の不正はなかったのか。「トランプ候補劣勢」が伝えられた10月中旬以降、トランプ氏が投票には「仕組まれた不正」があると盛んに強調した。その裏に、一体どんな意図があったのか。
 実は、投票行動にかかわる共和党側の不正が一部の新聞に報道されていた。トランプ陣営の策略を一部米報道から追っていきたい。

共和党が訴えられた理由

 投票日の1週間前、11月1日付ニューヨーク・タイムズ社説には、「共和党全国委の汚い投票トリック」という社説としては珍しい見出しが付けられていた。
 それによると、民主党全国委員会(DNC)はニュージャージー州の連邦地裁に対して、民主党支持とみられるマイノリティ有権者の投票を、トランプ派の運動員と共和党全国委員会(RNC)が協力して邪魔してはならないとする命令を出すよう求めたというのだ。つまり民主党は、黒人らマイノリティの投票を妨げているのは「共和党戦略の一例」だと非難しているのだ。
 前回大統領選でオバマ大統領が黒人の93%(今回クリントン氏は88%)、ヒスパニックの71%(同65%)を得票したのを見ても分かるように、マイノリティの投票率を下げれば、共和党勝利の確率が高まるのは明らかだ。

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