自衛隊退官直後の20年ほど前まで、筆者はこの2つの違いを全く知らなかった。あるきっかけでそこに相違があることを知り、防衛研修所教官であった西岡朗先生や参院法制局第3部長であった弁護士・播磨益夫先生からご指導を戴くようになった。おふたりとも今は故人となられたが、立派な研究者であられた。筆者自身もご両方のご指導の下、少しは勉強をすすめ、「これからは集団安全保障時代」ということをあちこちで発言するようになった。
 しかし、そんなことをいうと「国連が全く機能していないことは君でも分かるだろう」と殆どの人から無視された。「PKOが集団安全保障だということは認めるが、あれは武力行使はしないんだよ」ともいわれた。

有志連合は集団的自衛権か?

 だが、有志連合軍が当該国の要請もないのに攻撃する事態や、PKOも最近は武力行使をするらしい、ということが明らかになった昨今、「特定の国を守る自衛か、国際社会の秩序(平和)を守る集団安全保障(国際安全保障)かという、その行動目的こそが問題」という認識が日本でも拡がってきた。
 平成28年2月29日の防衛省主催シンポジウムで、前田哲防衛政策局長が「1国のみでは平和は守れない、今やコアリション(有志連合)により平和を維持する時代」と述べた、と報道された。現在、この有志連合(この指止まれ方式)について、
(1)有志連合は国連決議に基づかないから集団安全保障ではなく、集団的自衛権行使だ。
(2)当該国の要請がないのに行動するのは集団的自衛権発動の原則に反するから、有志連合は集団自衛権行使とはいえず、国連とは直接関係のない集団安全保障だ。
 という2つの意見が対立し、論争になっている。
 筆者の許にも「集団的自衛権行使と集団安全保障措置とはどう違うのか」という質問が絶えないので、ここに出来るだけ易しく説明したい。

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