12月7日、党首討論で発言する安倍晋三首相(写真左)と民進党の蓮舫代表 (C)時事

 今秋から永田町に吹いていた解散風だが、安倍晋三首相は年明けの衆院解散・総選挙を見送ることに決めた。解散は12月15日から16日のプーチン・ロシア大統領来日で北方領土問題の進展があればと思われていたが、11月19日のペルー・リマでの日露首脳会談でプーチン大統領が領土問題でハードルを上げたことから、大きな進展の見通しがなくなり、沈静化した。しかし、首相が12月26日から27日に米ハワイ・真珠湾を訪問し、オバマ米大統領と会談することが決まり、再び解散風が強まり始めていた。そうした中で、首相が結局、見送りを決めた判断に大きな影響を与えた理由の1つが、民進党の蓮舫代表の存在だという。

領土問題の進展なし

「解決にはまだまだ困難な道は続く。まずはしっかりとした大きな一歩を踏み出した」 
 12月16日、2日間にわたる日露首脳会談を終えた安倍首相は、記者会見で成果を強調した。もっとも会談の成果として発表されたのは、北方4島での「共同経済活動」を実施するため協議を始めるなど、日露の経済協力がほとんど。元島民らが査証(ビザ)無しで4島を自由に訪問できる仕組みを検討することでも合意したが、領土問題で交渉の進展はなかったようだ。共同経済活動が実施されたとしても領土返還に結びつくかどうかもはっきりせず、ロシアに経済協力だけを「食い逃げ」されるという懸念は強まっている。自民党の二階俊博幹事長は「国民の大半はがっかりしていると心に刻んでおく必要がある」と述べ、厳しい見方を示した。
 事前に期待の大きかったプーチン来日は政権浮揚にはつながりそうにないが、現職の首相が米大統領と共に真珠湾で慰霊行事をするのは初めて。首相がオバマ大統領と共に、旧日本軍の真珠湾攻撃による犠牲者を慰霊することは、米国にも歓迎されていることから成功が確約されている。日米の和解と日米同盟のさらなる深化を強く世界にアピールすることになり、こちらは政権浮揚に大きな効果がありそうで、内閣支持率の上昇も見込まれる。

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