この人の登場で、世界は大きな地殻変動に見舞われるかもしれない(C)AFP=時事

 

 トランプ次期米大統領の舌鋒は選挙キャンペーン時に比べれば鈍ってきたが、”トランポノミクス”は就任前から世界に影響を拡げている。中国、ロシアなどとの国際政治の駆け引きはひとまず置くとして、今、注目すべきは「製造業の地殻変動」といっていい。1990年代初頭に冷戦構造が崩壊し、先進国企業が雪崩を打つように低賃金の途上国に生産拠点を移した潮流は、「米国に生産拠点を引き戻し、雇用を守る」というトランポノミクスによって再び方向を転換しつつある。中国などの人件費が急騰し、生産地としての魅力が薄れ、さらにドイツの「インダストリー4.0」、米国の「インダストリアル・インターネット」のような「人から機械へ」という動きも加速する。トランポノミクスは世界の製造業の大きな転換点になるかもしれない。

 

衰えた「コスト優位性」

 2つの出来事がトランプ次期大統領の本気度を世界に示した。1つは、米空調機メーカー大手、キャリアがインディアナ州の工場をメキシコに移転する計画を撤回したこと。2つ目は、ソフトバンクグループの孫正義社長と世界最大のEMS(受託製造専門メーカー)、鴻海精密工業(ホンハイ)の郭台銘会長が共同でトランプ大統領に提示した総額570億ドル(約6兆7000億円)の対米投資計画だ。

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