世界を覆い日本に迫る食糧危機の真相

執筆者:加瀬友一2008年6月号

コメや大豆が「戦略物資」となる恐怖――これは待てば過ぎ去る嵐ではない。今こそ根本戦略を練り直し、「内外」での大改革を。 ブッシュ米大統領のちょっとした発言が、世界の新興国や途上国の間で大きな波紋を呼んでいる。話題は食品の値上がり問題。米国内でもパンやハンバーガーの値段がじわじわと高くなり、消費者から不満の声が上がり始めている。ガソリン価格は高止まりしたまま。大統領は、米国民の生活に直結する物価の上昇について、何か語らなければならないと思ったに違いない。「インド人の生活水準が向上しているのが原因の一つです。あれほどの人口大国で、食糧需要が膨らんだから食糧価格が上昇したのです」 諸外国の国内情勢にも目配りする“世界の政治指導者”として、視野の広さを披露したかったのかもしれない。調子づいたブッシュ大統領は演説をこう続けた。「インドでは中産階級が三億五千万人に達し、米国全体の人口を凌ぐほどになりました。人間は豊かになれば、より美味しく、より栄養価が高い食品を求めるようになります。彼らこそが、世界の食糧の需要と価格をつり上げているのです」 この五月二日の米国内の遊説先での言葉に、インド政府は激怒した。アントニー印国防相は、直ちに「極めてたちの悪い冗談だ」と反発。さらに「穀物の需給均衡が崩れた責任は、むしろ米政府の政策にあるのではないか」と畳みかけ、対米批判の論陣を張った。

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