1973年11月、毛沢東主席(左)と握手を交わすキッシンジャー米国務長官(当時)。当時からずっと、中国の弁護者とみなされてきたが… (c)AFP=時事

 安倍晋三首相がトランプタワーにドナルド・トランプ次期大統領(70)を訪ねた昨年11月17日。まさにその日その場所で、外交の大御所、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官(93)がトランプ氏と会談していたことはあまり知られていない。
 実は、キッシンジャー氏はトランプ政権の外交指南役として、旧知の次期大統領に外交の基本戦略を説いていたのだった。
 それだけではない。キッシンジャー氏は別に、マイケル・フリン次期大統領補佐官(国家安全保障問題担当=58=)と、合計数時間にわたって外交論議を重ねてきた。さらに、自分のスタッフだったK・T・マクファーランド氏(65)を副補佐官(同)としてホワイトハウスに送り込んだ。またトランプ氏に対して、レックス・ティラーソン前エクソンモービル会長(64)を国務長官に、と推薦していた。まさに、キッシンジャー氏が次期政権の外交の後ろ盾となっていたのだ。

ニクソン訪中時の真意

 トランプ氏が外交の素人だけに、キッシンジャー氏は90代の高齢ながら、持論を実現させる好機だとにらんだようだ。
 その持論とは、アメリカ外交の軸を親ロへと転換すること。つまり、トランプ氏自身の親ロ路線を実現する処方箋をキッシンジャー氏が授けるということのようだ。
 親中派とされたキッシンジャー氏が? と怪訝に思われるかもしれない。しかし、45年前の1972年2月、キッシンジャー氏がニクソン大統領と訪中して米国の親中路線を演出し、毛沢東主席や周恩来首相の前で見せた笑顔は、実は仮面だった。
 あの訪中の1週間前、2月14日にホワイトハウスでキッシンジャー氏はニクソン氏にこう説いた。

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