フィヨン元首相は、保守派の大統領候補として有力だったはずなのだが…… (c)AFP=時事

 社会党・左派の予備選挙でアモン氏が大統領候補に選出されたところだが、これで左派の体制が整ったわけではない。党内では予備選で戦ったヴァルス前首相が歩み寄りを見せているが、左派色の強いアモン氏には党内右派が反発を強めて、マクロン氏支持に回りつつあるという情報もある。環境派のジャド氏はアモン氏との会談の意向を示している。アモン氏は政策綱領を、大統領選挙本選に向けて穏健路線に修復させる予定と伝えられるが、いずれにせよ左派は自派の結集という第2ラウンドを戦わねばならない。その意味では昨年11月末に、フランソワ・フィヨン元首相に候補者を決めた保守派は、大統領選挙本選に向けた選挙活動を一足先に進めることができるはずだった。しかし「好事魔多し」、政治の世界は、一寸先は闇だ。
 フランス大統領選挙はこれまでだと、2~3月にかけて立候補者が出そろい、そのころから政策全般にわたる議論が戦わされる。ほとんど考えうる限りのテーマが、毎週のように入れ代わり立ち代わり議論されて、最後に大統領候補のイメージと重なって有権者の投票行動が決まる。しかしそれまでに候補はさまざまなスクリーニングを経験させられ、毎度のように候補者をめぐるスキャンダルが加わる。今回は、フィヨン氏と保守派にスキャンダルの大波が寄せてきたのである。
 社会党・左派の候補者が決まった1月29日、実はその日はフィヨン保守派・共和党(LR)候補の最初の決起集会の日でもあった。しかしフィヨン候補の選挙活動はその出発から躓いてしまった。フィヨン夫人の架空雇用・公金流用疑惑が巻き起こったからだ。

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