「トランプ登場」で変転する「米中露三国志」

執筆者:名越健郎2017年2月7日
トランプ登場で中露はどう動く?(昨年1月ペルー・リマで開かれたAPEC関連会合で顔を合わせた習近平国家主席(右)とプーチン大統領 (C)EPA=時事

 中国が1月中旬、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風41」を東北部の黒竜江省に配備したことが、米中露の3国関係に微妙な影響を与えている。中国としては、挑発を続けるトランプ大統領をけん制する狙いがあるが、ロシアは配備が極東に近いことに不快感を抱いている。トランプ政権がロシアと手を結んで中国を封じ込めるとの見方もあり、中国の焦りも読み取れる。

中国ICBM配備の衝撃

 東風41は多弾頭型で、最大10個の核弾頭を搭載。射程は推定1万2000キロで全米を射程に収める。まだ実験中の段階だが、配備を急ぎ、核戦力を誇示する狙いがあったようだ。黒竜江省への配備は、中国紙「環球時報」などが写真付きで報じた。国粋主義をしばしば煽る同紙は「中国の核戦力は米国を抑止する必要がある」と核戦力強化を訴えた。中国当局は確認していないが、配備されたのは、ロシア国境に近い黒竜江省大慶市とされる。
 ロシアのペスコフ大統領報道官は「この報道が正しいとしても、ロシアにとって脅威とはみなさない。中国はロシアの戦略的パートナーであり、両国の協力は政治、経済、貿易などあらゆる分野に踏み込んでいる」とコメントした。
 ロシアの軍事専門家、ビクトル・ムラホフスキー氏は「ロシアNOW」に対し、「中露は互いに核兵器を標的にしておらず、脅威ではない」としながら、東風41は1年前、中国北西部の新疆ウイグル自治区にも移動したと語った。モスクワ国際関係大学のミハイル・アレクサンドロフ教授も「両国の核戦力には大きな差がある。ロシアの核兵器は中国より完成されている」と述べた。
 技術的には、ICBMは中・近距離を標的にできず、ロシア極東への直接の脅威とはならない。

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