3月23日、ロンドンのトラファルガー広場で、テロ犠牲者を追悼する人々 (C)AFP=時事

 ブリュッセル同時多発テロの、ちょうど1年後の3月22日。ロンドンの中心部でのテロのニュースが飛び込んできた。

 「3.22という日付」が何かのキャンペーンを意味するのか、大した意味はないのか、まだ当局はつかみかねているという。4日前には、パリのオルリー空港のテロ未遂事件があり、ヨーロッパに住む人間は「テロがどこで起きても不思議ではない」という状態がデフォルト(常態)になる「日常」に生き、それにある程度、慣れるようになってきている。ちょうど10年前にテロが続発していたイスラエルのテルアビブで体験したのと、同じような感覚だ。空港、デパート、コンサートホールに、目を光らせ、武器を持った軍人がいる一方で、その横を何事もなかったようにカップルやベビーカーを引いた若いお母さんが通り過ぎる。テルアビブで見たときはびっくりしたが、今やヨーロッパの日常風景だ。

テロと日常が同居していた「テルアビブ」の風景

 行くまでに想像していたのと違って、当時のテルアビブは熱気に溢れていて、クラブやお洒落なカフェや、料理界の先端を行くシェフのレストランがあり、ナイトライフが充実した不夜城の街である。どこでも空港のようなセキュリティーチェックを受けるが、テロを恐れて外出しない、というムードは全くない。むしろ、「今」を究極的に楽しもうとしているような街だった。
 最近、ヨーロッパに渡航するのが危険かどうかというご質問をよく受けるが、自分がテルアビブに行くときも、ちょうど同じような不安を持っていた。イスラエル人の友人に忠告されたのは、テロの犯人は1人でも犠牲者を増やし、最大の「効果」を狙っているのだから、特に野外で人の集まるところに行かないこと。バザールのような、迷路のようになっている市場を、もの慣れないのにウロウロしたり、バスなどの乗り物に乗らないこと、ということだった。しかし今回のロンドンや昨年のニースのように、1台の車が凶器になってしまうなら、気をつけようもない。

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