有力と見られている林鄭月娥候補(C)EPA=時事

 

 3月26日(日)の長官選挙を前に香港にやってきた。2014年秋から冬にかけてビジネスセンターである中環(セントラル)地区を中心に主要3カ所の道路を占拠した雨傘革命、さらには昨年9月の立法会(香港議会に相当)の選挙に見られた反中央政府の意思を明確に打ち出す本土派の躍進などからして、あるいは選挙は盛り上がっているものと期待して街を歩いたのだが、そこに見られたのは相も変わらぬ人の波だった。彼らが選挙に関心を示すわけではない。

 それもそうだろう。中央政府が意中の候補者を事実上指名している一方、長官選出機関である選挙委員会の1200人の委員は、すでに商界(飲食、金融、輸出入、ホテル、不動産、建築など)、専業界(法律、会計、医学、技術、通信など)、労働福祉・文化界(労働組合、社会福祉、農漁業、宗教など)、政界(立法会、郷議局、人民代表大会香港地区代表、政治協商会議香港地区代表など)から選ばれているだけではなく、中央政府が「委員は各界を代表しているゆえに民主的だ」と公言しているだけあって、1200人の委員が自らの意思で投票するとは思えないからだ。言わば、わが国の国会における“党議拘束”に近い形の投票になるだけに、立候補受付段階で、結果はすでに見えているといっても過言ではない。 

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