“良質な移民”を選ぶ気のない「官の無能」

執筆者:出井康博2008年6月号

「ガソリン」と「後期高齢者医療制度」に国民の目が集中する国会で、四月十七日、この国の将来に大きな影響を及ぼすであろう決定がなされた。衆議院が介護士・看護師らの受け入れを盛り込んだ日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)を与野党の賛成多数で承認。インドネシア側で送り出しの準備さえ整えば、七月にも初めて外国人介護士らが入国する見通しとなった。 日本は昨年、インドネシアとの間でEPAを締結。実施のためには日本の国会による承認を待つだけになっていた。一方、二〇〇六年にフィリピンと結んだEPAにも介護士・看護師の受け入れが含まれていて、こちらはフィリピン上院が批准すれば実現する(ただし難航中)。受け入れ人数は、当初の二年間で両国からそれぞれ介護士六百人、看護師四百人。七月にインドネシアから入国する可能性があるのは、初年度分の介護士三百人、看護師二百人である。 介護士・看護師の受け入れは、日本にとっては外国人政策の大転換を意味する。これまで政府は、「高度人材」と呼ばれるホワイトカラー以外の外国人が労働目的で定住することを認めてこなかった。唯一の例外は日系人で、ブラジルなど南米出身者を中心に三十万人以上が在留。また最近では、中国などアジア諸国から「外国人研修・技能実習制度」(研修制度)で来日する「研修生」が年間十万人を超えるまでに急増している。彼らも日系人同様、大半が単純労働に従事しているが、在留期間には三年という上限がある。

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