毒ギョーザに沈黙「食品安全委員会」の非科学性

執筆者:一ノ口晴人2008年6月号

机上演習と反省会はやるが、肝心な時に動かない。ギョーザ事件で役割を放棄した「食の番人」が熱心なのは自己正当化だけ――。「ギョーザ事件は、消費者庁を設置するための陰謀ですよ」 食品安全委員会のある関係者は、真顔でそう囁く。 言い分はこうだ。昨年十月の所信表明演説で「消費者庁構想」をぶち上げた福田康夫首相は、今年一月には国会でふたたびその必要性に言及。すると一月末になってギョーザ事件が明るみに出て、JT(日本たばこ産業)が緊急会見した。JT株の五〇%を保有する筆頭株主は財務大臣で、JTは財務省の実質的な「子会社」だ。その後、旧経済企画庁や旧大蔵省の影響が強い国民生活センターが対策の主導権を握った。二月には福田首相が自ら委員を選んだ「消費者行政推進会議」の初会合が開かれ、四月の会合で首相は「消費者庁の創設に向けて」という文書を配布、「(消費者)政策全般にわたり、消費者の視点から監視する強力な権限を有する消費者庁を来年度に立ち上げる」と表明した。それ以降はギョーザ事件の捜査も、中国側との協議もうやむやになった。この流れが、ギョーザ事件は旧大蔵省人脈を使った消費者庁創設のための政権の陰謀であることを雄弁に物語る――。

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