資源大国ブラジルの台頭を見逃すな

執筆者:新田賢吾2008年7月号

BRICsの中で鉱業、製造業、農業のすべてで高い輸出競争力を持つ唯一の国。“南米の雄”との経済協力関係の再構築を日本も急ぐべき時期に来ている。 急激な成長で世界経済の牽引車となったBRICs。その中で一歩出遅れた印象のあったブラジルが、ここに来て急激な台頭をみせている。輸出量で世界トップの鉄鉱石、大豆、エタノールなど一次産品やエネルギーの価格高騰が強い追い風になっているが、航空機、資源、石油の分野にグローバル市場で存在感を発揮するブラジル企業が現れたことも大きい。南米では最も安定感のあるルラ政権の国際的影響力も着実に増している。地球の裏側のブラジルの台頭に日本は正面から向き合う時期を迎えている。 新興成長国の代表としてBRICsを一括りに考えがちだが、実はBRICsは二つのグループに分けられる。中国、インドがともに十億人を超える大人口国であり、低コストで優秀な人材を武器に世界から製造業やIT・サービス産業を引き寄せて成長してきたのに対し、ブラジル、ロシアは人口が多いとはいえ、ともに二億人未満で、製造業よりも資源輸出を成長の原動力にしてきた。単純化すれば、資源供給国の「BR」に対し、資源消費国の「IC」という構図がBRICsには存在する。

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