私たちは、この期に及んで財務官僚らが繰り広げた“裏工作”を記憶しておく必要がある。これは歴史的ドキュメントだ。 六月六日、「国家公務員制度改革基本法案」が参議院本会議で成立した。渡辺喜美・行政改革担当大臣が満面の笑みを浮かべ深々と礼を繰り返すと、場内の民主党議員から「大臣、一言どうぞ」などと好意的な声が舞い飛ぶ。政界再編の予兆すら感じさせる不思議な光景が広がった。 一方、すっかり面目を失ったのが、最後まで官僚の振り付けどおり法案成立阻止に動いた町村信孝官房長官、そして、福田康夫首相の指示などどこ吹く風とばかり「継続審議にすべき」と繰り返していた自民党の伊吹文明幹事長だ。実質合意の成立する五月二十七日直前、山岡賢次・民主党国会対策委員長は記者団に「(政府・与党の)奥の院の奥からつぶしにきている」と語る。これは、二十二日の時点で両党国対委員長以下の実務レベルでほぼ合意に至っていたものを、町村・伊吹両氏が相次いで異議を唱え、協議を不調終了に追い込もうと動いたことを指す。 しかし、これが官僚の思惑どおりと察知した山岡氏、渡辺氏、大島理森・自民党国対委員長らは、二十七日昼前、最後の執念を燃やし連絡をとりあう。同じ頃、国際会議に参加する各国首脳と横浜で会談中の福田首相からは、法案成立を強く求める電話指示が関係者に入った。結局同日午後、町村・伊吹両氏の工作は封印され、合意は成立した。

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