財テク独法を廃して年金運用を民営化すべし

執筆者:高橋洋一2008年7月号

なぜ経済財政諮問会議は現在の制度を守ろうとするのか。公的年金運用は、もっと大胆な改革が可能なはずだ。  五月二十三日の経済財政諮問会議で、四人の民間議員が公的年金基金の運用について不思議な提案を行なった。民間議員の一人でもある伊藤隆敏東大大学院教授が会長を務めるグローバル化改革専門調査会がまとめた報告書を踏まえたものだ。  提案では、厚生年金と国民年金の積立金からなる公的年金基金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、厚生労働相が認可する五年間の中期計画で運用資産の構成に枠をはめられているため、機動的な運用ができないこと、人件費の制約により一流の金融・投資専門家を雇えないことなどの問題点を指摘。その上で、ガバナンス強化のために、「運用基金を独立した複数の基金に分割し、運用の効率化を図るべき」とし、中央銀行のような独立性の高い組織に改革し、金融専門人材による運用で、一定の許容リスクのもとで収益性を高める努力ができるようにすべきであると提言している。また、金融機能の中核に存在すべきとの観点から、以前に決定されたGPIFの神奈川県移転の中止も求めている。  これらの提案の背景として、公的年金の運用利回りが低いことがあげられている。諸外国の公的年金基金の過去五年間の平均収益率をみると、ノルウェー(積立金額三十六・二兆円)が六・九%、スウェーデン(同十四・六兆円)が七・五%、カナダ(同十二・九兆円)が一〇・四%。これに対して、約百五十兆円の積立金を運用する日本は三・五%にとどまっている。GPIFは、五年間の中期計画により国債を中心とする国内債券六七%、国内株式一一%、外国株式九%などと資産配分を規定されているが、そのリスク水準に比べて利回りが低いとも指摘している。

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